政治家達の流行語「記憶にございません」はなぜ罪にならないのかを解説

政治家達の流行語「記憶にございません」はなぜ罪にならないのかを解説

こんにちは、あーてぃです。

最近の政治では、森友学園問題や加計学園問題のネタで持ち切りですね。

「いい加減さっさと解決して、他の必要なことをやらんかい」と言いたくなりますが、これら問題の中で、容疑のかかった政治家や官僚達が、国会の場で決まって口にする流行語。

『記憶にございません』

この言葉を聞く度に私は「またかよ!いい加減に本当のことを言えよ」と、総ツッコミしたい気持ちになってしまいます。

しかし、なぜ政治家か官僚達は『記憶にございません』を繰り返していれば、罪にならないのか?

今回は、そのことについて解説します。

記憶にございませんが罪にならない理由

そもそも『記憶にございません』は、「記憶がないなんて嘘を付いてるんだから、罪になるんじゃ」と思われる方もいるかと思います。

しかし偽証罪は、本人の主観的記憶を基準として自らの体験と異なる嘘の内容を言った場合に適応されます。

そう『本人の主観的記憶が基準』となっており、そしてその本人の記憶があるかどうかは、本人の自白でしか証明できないので、偽証罪とはならないわけです。

簡単に言えば、記憶にないと嘘をつくこと自体は、法律上では処罰対象とはなっていないのです。

なので、仮に嘘発見機を使って嘘だと分かっても罪にはなりませんし、そもそもウソ発見機を本人の意思に反して使うこと自体が違法となっています。

つまり、なにかを聞かれた時に「はい」、「いいえ」で答えて、それが違えば嘘になってしまいますが『記憶にございません』と答えた場合。

「記憶にないので、はい、いいえ、どちらともとれない」→「記憶にないと嘘をつくことは、偽証罪にならない」となっているので、例え証人喚問の場でも追求できないというわけです。

そもそも日本の裁判では『自白に頼らない立証』が求められているので、本人の告白以外での証拠があるかどうかが、大切となってくるわけです。

記憶にございませんを使ったことのある有名政治家

『記憶ございませんが』罪にならないロジックが分かったところで、今度はその『記憶にございません』を使い。

証人喚問、集中審議、裁判の場に対応した、有名政治家達を4人紹介します。

猪瀬直樹

医療法人徳洲会グループから5千万円を不正に受領した問題で、集中質疑を受けた、猪瀬直樹元東京都知事。

そんな彼も、集中質疑の場で「覚えていない」、「記憶にない」などの、いわゆる『記憶にございません』発言を計18回も繰り返して、集中質疑の場を終えました。

しかし結果は、東京都民だけなく全国民から大批判を受けて、その数日後に知事を辞任しました。

舛添要一

「たけしのTVタックル」のコメンテーターとして出演し、同じく同番組でコメンテーターとして出演していた田嶋陽子氏との熱い論戦で有名となり。

後に東京都知事となった、舛添要一氏。

そんな彼も、自らの私欲のため、政治資金を数億円使い込んでいたとされる「政治資金規正法違反」の疑惑がかかります。

そして都議会総務委員会の集中審議の中で「全く記憶ない」、「覚えていない」などの、いわゆる『記憶にございません』発言を連発して、自分は無実だと訴えました。

しかし結果は、東京都民だけなく全国民から大批判を受けて、あえなく知事を辞任して雲隠れしたことで、この騒動は終焉しました。

今でもyahooニュースなどで時折、何か事件があったときにコメンテータとしての発言が取り上げられていますが、そんな彼が公のテレビ場に復活する日は来るのでしょうか?

私は復活するだろうと、思っています。

石原慎太郎

説明不要の元東京都知事の石原慎太郎氏。

東京築地市場の豊洲への移転問題を検証する都議会の委員会で、移転を決めた当時の知事として証人喚問された石原氏。

そんな彼も証人喚問の場で「記憶ない」、「報告にない」と、いわゆる『記憶にございません』発言を連発するだけでなく。

証人喚問の冒頭で「2年ほど前に脳梗塞をやり、患部が海馬で記憶の箱がうまく開かない。全ての字、ひらがなさえ忘れた」と、徹底して記憶傷害の可能性があることを主張しました。

ただ、証人喚問が終わった後は、自分の言いたいことをすらすらと喋る彼を見ていると、本当に記憶傷害だったのは定かではありません。

それにしても、また「東京都知事かよ」と言いたくなるほど、東京都知事と『記憶にございません』にはつくづく縁があると思いました。

野々村竜太郎

約300万円の政務活動費を不正に支出していた問題で、ネットやテレビで放送されている釈明会見の中。

まさかの号泣会見を見せ、そのあまりのおもしろさのあまり、お笑いのネタなどにも多く使われた、元兵庫県議会議員の野々村竜太郎氏。

そんな彼も、政務活動費を不正支出していた問題での裁判中。

『記憶にございません』を繰り返すだけなく、「解離性健忘症」の疑いがあると診断書まで見せる徹底ぶりを見せました。

しかし結果は「懲役3年・執行猶予4年」の判決を持って、議員は首となってこの騒動は終焉しました。

釈明会見で、あれだけ爆笑したのは、後にも先にこの人だけになるでしょうね。

いい意味で日本の政治に、希望があるのだと思いたいものですね。

政治家達の流行語、記憶にございませんの効果は絶大

流行語
今回4人『記憶にございません』を発言した有名政治家を紹介しましたが、紹介した4人うち刑罰となったのは、野々村竜太郎氏だけとなっています。

その野々村竜太郎氏も、政務活動費を不正の物的証拠を兵庫県警に見つかったので懲役となっており、自白の有無が有罪かどうかの決定的な要素とはなっていません。

これらのことから、証人喚問、集中質疑、裁判などの場で『記憶にございません』発言を終始続けることが、いかに法律的に追求しづらく罪に問えないかがよく分かります。

結局のところ、明確な証拠さえ出てこなければ、後は『記憶にございません』発言をしていればいいとテンプレート化されているので、みんな同じような場で『記憶にございません』と言っているのかと思います。

記憶にございませんの弱点

『記憶にございません』は万能の言葉のように見えますが、実は弱点もあります。

そもそも『記憶にございません』を使うことは、「自分の証言は全く証拠になりませんよ」と宣言しているのと同じです。

ですので、他に証拠が見つかった場合、それに対する弁明も全くきかないわけです。

だって「あなたは記憶がないのだから、その弁明も本当にあったものだと立証はできませんよね」となるわけです。

最後に

『記憶にございません』を使えば、そこが法的な場であっても逃れることは可能かもしれません。

しかし『記憶にございません』と言ってしまうことは、自分の負うべき責任から逃げると宣言しているも同然です。

ですので、そんな言葉を使えば、人からの信用も同時に失ってしまう。

このことだけは、決して忘れないようにしたいものですね。